見上げれば、視界いっぱいに広がる澄みわたった青空。
 夏に相応しい暑い7月の、とある金曜日。
 イギリス西南部。サマーセットシャーにあるパブリックスクール、セント・ラファエロでは、本日、敷地内にある教会で、卒業式が執り行われた。
 卒業生は全員、制服の上から伝統的な真っ黒のローブを羽織り、頭には『博士の帽子』とも言われる正方形の板の部分から房を垂らした黒い角帽を被り、参列している。
卒業式では、寮順で卒業生の名が呼ばれてゆく。呼ばれた生徒は、学院長の前に立つと、手が差し伸べられるので、その手を両手で握りしめ押し戴く。学院長から祝辞の言葉を言われ、最後に学院長の背後に控えた副学院長から、卒業証書が渡される。生徒の中には、握手と同時に涙を見せる生徒が幾人かいて、否が応でも卒業式という、せつなくも晴れがましいセレモニーを実感させられる。緊張のあまりカチコチになって、ギクシャク動く生徒などもいて、笑いが誘われた。
 寮の立地順により、最後になったヴィクトリア寮の生徒の名が呼ばれ始める。
「シモン・ド・ベルジュ」
一番親しい友であり、生涯親友でありたいと願う友人の名が呼ばれる。ステンドグラスから差し込む光に照らされ、いつも以上に光輝いているシモンを見て、まるで一枚の絵画のようだと、ユウリは笑みを零す。
 さすが、シモン。カッコイイ。
 オニールの時も凄かったけど、シモンが一番凄い。
一斉に溜息とも感嘆ともいえるざわめきが、聖堂中を支配した。
 最後だから、仕方ないよね。
 そう思うと、少しだけユウリの胸が痛んだ。
 ユウリとシモンのつきあいは、これで最後なんかではないけれど。
 明日からはもう、毎日のように顔を合わせ、誰よりも近しい存在として過ごした、奇跡のような日々とはお別れで。
 やはり、一つの区切り、最後な訳だから。
 少しだけ、寂しかった。
「ユウリ・フォーダム」
 あれこれ考えているうちに、とうとう自分の名が呼ばれる。


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