翌日。
 当初の予定通り、ヴィクトリア寮最上階にあるユウリの部屋で、シモンを交えて宝探しについて会談する。
 思った通り、事態をまるで把握してないぼんぼんは、扱いやすく、取引はスムーズにいった。
 後は、さっさとコイツを追い出すだけ。
「それで、ベルジュ。お前は明日も呑気に授業を受けるつもりなのか?」
 嘲るようにアシュレイがシモンを一瞥すると、嫌そうに答えが返される。
「今日、これから城に戻りますよ」
 そこで、シモンは少し逡巡してから、ユウリに視線を向ける。
「ユウリ、…君も」
「そーか、これから帰宅か!そしたらユウリ、イタリアへは俺が一緒に連れてってやるから、授業が終わったら速攻で館まで来い!」
 シモンの発言を遮って、アシュレイは隣に座っているユウリの首を左腕で抱きよせて命令する。
「わっ。…ぇえっと、あー、はい」
 勢いに押されて、ただ返事をしただけのようなユウリにアシュレイは意地悪げに笑って、もう片方の手でユウリの鼻を抓む。
「なんだ、それとも一人でイタリアに向かうか?一人で交通手段を手配して?イタリア語が分からないお前が無事、目的地まで辿り着けるというなら、それでもいいが」
「よくないです、自信ありません。ぜひ、お願いします。連れてって下さい」
 情けなさそうにユウリが上目遣いで見上げてくる。
すんなり腕の中に治まったままのユウリにアシュレイの機嫌は上昇して、慌てて口を挟んでくるシモンを楽しげに切って捨てる。
「ユウリ、だから僕と一緒に」
「コイツは一日も無駄に出来ない位、勉学をいそしまないとマズイんだろ?休むなんて、もっての外」
「交通手段なら僕が手配するし、案内人も手配するからユウリは一人で…」
「なんで態々、目的地が一緒なのに、別々に行かなきゃならない。俺と二人っきりってのが、そんなに不安か」
「それは…日頃の貴方の行いを思えば当然でしょう?」
「そうかな。ユウリ、お前の意見は?」
 二人のやり取りを居心地悪げに聞いていたユウリは、シモンの不安を払拭するべく笑顔を向ける。
「別に大丈夫だよ、シモン。心配なんていらないから。むしろ僕一人の方が危険。でも、案内人なんて申し訳ないし、アシュレイは頼りになるから」
「それは頼りにはなるだろうけど」
 能天気なユウリにシモンは天を仰ぎたくなる。
「本人が了承してるんだ、貴様がとやかく言う権利はないと思うが。あんまりうだうだ言ってると、交渉決裂とみなすぞ」
「シモン、大丈夫だから」
「わかりました、ユウリの事、よろしくお願いしますね」
 意見を切り替えてにこやかに言ってくるが、内心ではまだ不承不承なのが透けて見えて、アシュレイは勝ち誇ったように目を細める。
「ユウリの事でお前にお願いされる覚えはないが、よろしくされてやるよ」



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