|
ターゲット、発見。 帝人の行動範囲を把握している臨也は、偶然を装って帝人の前を通りすがり、わざとらしく振り返って声をかけた。 「あれ、帝人君だ。こんにちワー!」 さて、どんな反応をしてくれるのかな。今度こそ、期待に応えてね。 帝人は臨也と目が合うと、にこやかに微笑んだ。 「こんにちは、臨也さん。一本向こうの通りに静雄さんがいましたから、見つからないうちに此処から離れた方がいいですよ」 …あれ? 変わらない。いつもの帝人君だ。 おかしいな? 強がってみせてるのかな? そんなんじゃ、可愛くないよ、帝人君。俺は君の傷ついた顔がみたいんだから。 臨也は隣にいた少女を優しく抱き寄せて、以前は帝人に向けていた甘い笑顔を少女に向ける。 「あ、紹介するね、この子、俺の新しい恋人。可愛いでしょ」 「やだー、臨也さんったらv」 少女が嬉しそうに臨也の胸に擦り寄る姿を見ても、帝人はニコニコと笑顔を崩さない。 むしろ、帝人の隣にいた紀田正臣の方がしかめっ面をしていた。 「はい、すごい可愛い方ですね。さすが、臨也さんですね、お似合いです」 「そうでしょ」 「はい」 「ホントですよ、羨ましいですよ〜。こんな美男美女なカップル、そうはいませんですからね。どうぞ、末永くお幸せにつきあって、二人の世界を創りあげて閉じこもっちゃってください。応援してます。馬に蹴られて死にたくはありませんから、お邪魔虫はさっさと退散しますね。じゃ、失礼します。ほら、帝人、行こうぜ」 帝人を守るように臨也の前に立ちはだかった正臣は、早口言葉のように言いたいことだけ言うと、帝人の手を握って連れ去ろうとする。 「そんな言い方、失礼だよ、正臣。すみません、臨也さん。でも、確かにデートの邪魔をしたら悪いですから、行きますね」 じゃあ、と言って小さくお辞儀をして去っていこうとする帝人のもう片方の手を、思わず臨也は握って引き止めてしまった。 「それだけ?」 「はい?」 「他に、言うことはないの? 帝人君」 「何もありませんけど・・・。何かありましたっけ?」 キョトンとした顔で言う、帝人の顔が憎らしい。 普通、あるだろう。なんで別れて3日も経ってないのに新しい彼女がいるんだとか。 それ以前に、別れたくないとか、どうして別れるなんて言うんですか、とか言う言葉はないわけ? なんで、別れを言い出した俺の方が、帝人君の言葉を待ってなくちゃいけないのさ、おかしいだろう。おかしいよ。 臨也は、帝人の手を放した。 「ううん、ごめん。俺の勘違い。行っていいよ」 「はい。じゃあ、失礼します」 「失礼しまっす!」 律儀にまたもお辞儀する帝人を、正臣が強引に引っ張って歩み去っていく。 「紀田君、あんまり急ぐと帝人君転んじゃうよー」 臨也は笑って茶化してみたが、切れ上がったその瞳は、手放した自分とは違って、帝人と繋がれたままの手を凍りついた視線で睨み続けていた。 " 他、興味のある方は本誌をどうぞv
|